デビューから30年間と新たな現在の魅力に迫る「出久根育展 チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」が武蔵野市立吉祥寺美術館で開催

武蔵野市立吉祥寺美術館で、画家・絵本作家として活躍する、出久根育さんの個展「出久根育展 チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」が2024年1月20日(土)より開催される。会期は3月3日(日)まで。

出久根さんは1994年に最初の絵本『おふろ』でデビュー。2003年にはグリム童話『あめふらし』(*)のイラストレーションで、国際的に権威ある賞として知られるブラチスラバ世界絵本原画展グランプリを受賞し、現在に至るまで多くの絵本作画を手がけてきた。

*『あめふらし』(作:グリム兄弟 訳:天沼春樹 パロル舎 2001年/訳:若松宣子 偕成社再刊行 2013年)

2002年のチェコ・プラハへの移住から20年が経ち、出久根さんは現在絵本作家としての新しい季節を迎えている。今回、本展に合わせて手がけられた新作絵本2作の原画も含め、約200点の作品をとおして、デビューから30年間、真摯に描き続けた出久根さんの新しい“現在”に至るその魅力を辿る。

『おふろ』(学研 1996年/2007年に復刻版を出版)※初出 「学研おはなし絵本」 1994年12月号

会場に展示されるのは、『あめふらし』をはじめ、出久根さんの代名詞ともいえる『マーシャと白い鳥』などの中東欧の民話や、チェコの伝統行事を独特の美しい文章で表現したエッセイ『チェコの十二ヵ月 -おどぎの国に暮らす-』の挿絵原画、愛猫サビンカが登場するチェコ語を出久根さん自身が訳した絵本『ぼくのサビンカ』(*)など。デビュー作『おふろ』の原画、初期の銅版画、児童文学作家の高楼方子さん、作家の梨木香歩さんの物語のために描かれた挿絵原画も見ることが出来る。

*『ぼくのサビンカ』(ブロンズ新社 文:ラデック・マリ― 訳:出久根育 2023年)

『マーシャと白い鳥』(再話:ミハイル・ブラートフ 文:出久根育 偕成社 2005年)*ちひろ美術館蔵

チェコをはじめ、描き出す中東欧の世界が高く評価されている出久根さん。2011年に刊行された『Živá voda』(*)では、「チェコのグリム」と評されるカレル・ヤロミール・エルベンが収集した民話の挿絵を手がけた。エルベンの世界が日本人である出久根さんにゆだねられた意味は大きい。

さらに、児童文学作家・わたりむつこさんとの共作「こうさぎ」シリーズでは、チェコの文化や、季節ごとに姿を変える自然の美しさを描いている。同作は、幼年向けの絵本を描きたいと願っていた出久根さんにとってのひとつの転機となった。

*日本語版『命の水 チェコの民話集』は2017年刊行

『命の水 チェコの民話集』(編:カレル・ヤロミール・エルベン 訳:阿部賢一 西村書店 2017年)
『こうさぎと4ほんのマフラー』(作:わたりむつこ のら書店 2013年)

そして2023年には、約30年ぶりに2冊の創作絵本『わたしのおにんぎょうさん』(偕成社)と『こどもべやのよる』(岩波書店 2024年2月刊行予定)を手がけた。2作品の原画は本展で初公開となる。これらの物語は出久根さんの子ども時代を投影しており、日本とチェコ、2つの国に育まれて辿り着いた、出久根さんの現在の魅力も伝わってくるものだ。

遠く離れた国でそれぞれ育まれたものがつながり、ますます魅力を増す出久根さんの作品。その軌跡やこれからの作品を一望出来る貴重な展覧会を、ぜひお見逃しなく。

『わたしのおにんぎょうさん』(作:でくねいく 偕成社 2023年)

 

《わたしはしっているの》2023年

 

出久根育(でくね いく)/東京都生まれ。1992年、武蔵野美術大学卒業。1994年、最初の絵本『おふろ』を発表。1998 年、ボローニャ国際絵本原画展入選。同年、東京で開催されたドゥシャン・カーライ氏のワークショップに参加。2003年、グリム童話『あめふらし』(パロル舎 2001年/偕成社再刊行 2013年)でブラチスラバ世界絵本原画展グランプリ受賞。2006年、ロシア民話『マーシャと白い鳥』(再話:ミハイル・ブラートフ作 偕成社 2005年)が日本絵本賞大賞受賞。2011年、『もりのおとぶくろ』(作:わたりむつこ のら書店 2010年)が産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞。2005年にブラチスラバ世界絵本原画展で特別展示 。2022年、チェコ、プルゼニ州西ボヘミア大学ラジスラフ・ストナルデザイン・芸術学部シンポジウムにてイジー・トルンカ賞受賞。2002年よりプラハ在住。

 


【出久根育展 チェコからの風 静寂のあと、光のあさ】

会期:2024年1月20日(土)~2024年3月3日(日)

開館時間:10:00〜19:30

休館日:1月31日(水)、2月21日(水)、28日(水)

入場料:300円 *中高生100円、小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料

会場:武蔵野市立吉祥寺美術館

住所:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目8−16 コピス吉祥寺A館 7F

ウェブサイト:https://www.musashino.or.jp/museum/1002006/1002008/1005926.html

 

展覧会関連イベント(1) 出久根育のワークショップ 「親子でチェコの紙遊び」

日時:1月27日(土) 14:00~16:00

場所:吉祥寺美術館音楽室

対象:小学生以下 ※必ず保護者同伴

定員:10組(20名)申し込み多数の場合は抽選とします。

申し込み方法:1月12日(金)までに、「(1)ワークショップ名 (2)参加者氏名(本人と保護者) (3)年齢 (4)電話番号」を明記の上、メール(museum-ws@musashino.or.jp)のみで受付。

講師:出久根育

参加費:300円

 

展覧会関連イベント(2) 出久根育のトークショー 「絵本画家としての現在」

日時:1月28日(日) 14:00~16:00

場所:吉祥寺美術館音楽室

定員:70名(申し込み先着順)

申し込み方法:1月7日(日)10:00より、電話(0422-22-0385)のみで受付開始。ただし、1回の電話につき2名まで受付可。

出演:出久根育

参加費:無料 *ただし、美術館チケットが必要


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