【展覧会レポート】「レオ・レオーニの絵本づくり展」が渋谷ヒカリエホールで開催中!

レオ・レオーニの絵本づくりに焦点を当てた展覧会「レオ・レオーニの絵本づくり展」が、渋谷ヒカリエ9Fのヒカリエホールで2025年7月5日(土)からスタートした。会期は2025年8月27日(水)まで。

小学校の教科書にも掲載されている絵本『スイミー』や『アレクサンダとぜんまいねずみ』のほか、『あおくんときいろちゃん』など多数の名作を世に送り出した絵本界の巨匠、レオ・レオーニ。その生涯において携わった仕事は、グラフィックデザインやアートディレクションから絵本制作まで多岐にわたる。

本展では、その中でも49歳になってから始めた絵本づくりに焦点を当て、アートディレクターとして培った豊富な経験やセンスに基づく、コラージュをはじめとしたレオーニならではのさまざまなテクニック(技法)を紐解いていく。

 

第1章 テクニック(技法)

レオーニは、子どもたちに自然と絵本のストーリーに入り込んでもらうために、絵を見るだけで何が起こっているのかを理解できることを心がけて画面構成をしていた。実はその中には数多くのテクニックが使われているが、その1つひとつに注目したことはあまりない、という人は多いのではないだろうか。ここでは、そのテクニックを使われている場面を原画と共に紹介している。

「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年

手ちぎりやハサミづかい、コラージュ、紙選び、紙への着彩、モノタイプ、フロッタージュ、スタンピング、鉛筆と色鉛筆、油彩と水彩……実に多くのテクニックが、場面やモチーフごとに使い分けられていることがよく分かる。じっくり見ると、1枚の絵にはさまざまな色やテクスチャがあることに気がつく。それらの表現が、違和感なくまとまり、1つの画面に存在しているのだから驚きだ。これは、レオーニが49歳で絵本を作り始める以前に務めていた、アートディレクターとしての経験とセンスによるものだろう。

ねずみのパーツ。「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
手ちぎりで表現されたネズミたち。「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年

 

 

第2章 ストーリー(ものがたり)

さまざまな技法が駆使されるレオーニの絵本だが、ストーリーももちろん、絵本として欠かせない重要な要素だ。第2章の壁一面にはレオーニが手がけた絵本が、あらすじと共にずらりと紹介されている。49歳から絵本を作り始めたのにも関わらず、これほどまでの量の絵本を手がけているのだから驚きだ。ここでは、30年以上にもおよぶ絵本づくりの軌跡を振り返る。

「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年

それぞれの絵本のあらすじから読み取れるようにレオーニの絵本には、「自分探し」のテーマが存在しているようだ。絵本に登場する主人公たちは、レオーニ自身でもあると孫のアニー・レオーニさんは語る。幼少期から住む場所を転々とし、絵本作家になるまでも紆余曲折のあったレオーニ自身、生涯「自分探し」を続けていたのだろう。

「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年

さらにもう一つ、レオーニの物語に頻出するテーマとして「平和」がある。ここでは、私たちの身の周りに起こりうる事件の解決方法を提案してくれる、絵本『6わのからす』の原画が展示されている。原画で物語を追うという貴重な時間を体験できる。

 

第3章 レオレオリウム!

「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年

ガラス製の容器に動植物を入れて飼育栽培する「テラリウム」づくりに幼少期から励んでいたレオーニ。テラリウムはレオー二の絵本の重要なイメージの源泉となっている。第3章では、Bunkamura ザ・ミュージアムと、インタラクティブ作品の制作をベースに、空間・映像・プロダクトなど、領域を横断しながら活動する「plaplax」のコラボレーションによる、レオーニの頭の中を覗き込んだような「レオレオリウム」を展開している。

壁やスクリーンに大きく引き伸ばされた動く絵や、心地のよい音楽や自然の音。そこには、見渡す限りレオーニの世界が広がっている。

「空想の庭」円形のスクリーンの中で、レオーニがキャラクターをセッティングする様子を、空想しながら眺める。ジオラマはレオーニのアトリエがあったイタリアのポルチニアーノの風景をベースに作成されている。ぜひ四方から眺めてみてほしい。
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年

ここではレオーニの作った石や、植物、生き物など、さまざまなパーツが標本のように展示されており、博物館気分も味わえる。会場には至る所にさまざまなしかけが施されており、本当にそれぞれが生きているかのよう。レオーニの絵本の中に入り込んだ気分で、冒険と観察を楽しめる。

「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
「スイミー・スクロール!」美しいモノタイプやスタンピングで彩られたレオーニの海中世界を堪能できる。
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
フロッタージュを体験できるワークスペース。

また、レオーニの絵本のテクニックの1つとしても使われている、凹凸のあるものの上に紙を置き鉛筆などで擦ってその凹凸を写しとる技法「フロッタージュ」を体験できるワークスペースも。蝶、魚、きのこ、葉っぱなど好きな形の紙でフロッタージュを試したら、奥の壁に貼ってみよう。会期中にレオーニの世界がまた少しずつ広がっていくことだろう。

会場を出ると、実際にレオーニの絵本を読むことができるスペースもあり、グッズコーナーも充実。ここでしか手に入らない会場限定アイテムも多数登場しているので、お見逃しなく。

レオーニの絵本づくりを分解し、深掘りして知ることができる貴重な展覧会。長い時を経ていまなお愛され続ける絵本に隠れた、その秘密を存分に楽しみながら知ることができるだろう。

また7月29日(火)には、特別イベント「SDGsなスイミーバッグづくり 夏休み親子ワークショップ」が開催される。価格変更等によりやむを得ず使用できなくなったレオーニの絵本のカバーを活用し、オリジナルのペーパーバッグを制作する。夏休みのこの時期、ぜひ親子で環境について考えながら、手づくりの楽しさや喜びを分かち合ってみてほしい。

 


レオ・レオーニの絵本づくり展

会期:2025年7月5日(土)~8月27日(水)

休館日:7月24日(木)

時間:10:00〜19:00 *入場は18:30まで

入場料:7月鑑賞券 一般1,800円、大学・高校生1,200円、中学・小学生900円

8月鑑賞券 一般2,400円、大学・高校生1,700円、中学・小学生1300円

*本展は来場月で料金が異なります。
*展示替えはございません。
*学生券をお求めの場合は、学生証のご提示をお願いいたします。(小学生は除く)
*こども(小学生以下)のみの入場はできません。大人(保護者)の同伴が必要です。
*障がい者手帳のご提示で、ご本人様とお付き添いの方1名様は半額となります。当日窓口にてご購入ください。(7月鑑賞券:一般900円、大学・高校生600円、中学・小学生450円 8月鑑賞券:一般1,200円、大学・高校生850円、中学・小学生650円)
*未就学児は入場無料。
*日時予約制ではございませんが、会場の混雑状況により、日時予約制となる場合がございます。ご来場前に展覧会HPをご確認ください。

会場:〒150-0002 ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F)

住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

公式ウェブサイト:

 

SDGsなスイミーバッグづくり 夏休み親子ワークショップ

開催日:2025年7月29日(火)

会場:渋谷ヒカリエ8階 8/COURT (レオーニ展会場ではございません。ひとつ下の階となります。)

参加料: 無料

受付方法:当日受付・先着順(当日11:00より受付開始)
ワークショップ会場にて当日受付順に参加可能な時間帯をご案内します

対象:小学生の親子ペア

定員:各回10組20名

<タイムスケジュール>
①11:15~12:00
②13:00~13:45
③14:00~14:45
④15:00~15:45
⑤16:00~16:45

*お子様2名と保護者の方でもご参加可能です。但し、お渡しする材料を増やすことはできかねますので予めご了承ください。ご家族の中で協力し合ってお楽しみください。
*会場スペースの関係で、保護者の方は1名のみのご参加でお願いいたします。

 


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『だれも知らないレオ・レオーニ』(玄光社)


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