日々刊行されるたくさんの書籍のなかから、イラストレーション編集部がおすすめする7冊を紹介します。
梅雨に入り天気も崩れがちな今日この頃、お家でゆっくり本をめくる休日の過ごし方はいかがでしょうか? 絵本やメイキング・ブックなどさまざまなジャンルから、お気に入りの1冊を見つけてみて下さい。
『ぼく』
谷川俊太郎 作 合田里美 絵
(岩崎書店)1,700円+税 D:漆原悠一(tento)
『ほっきょくで うしをうつ』
角幡唯介 作 阿部海太 絵
(岩崎書店)1,700円+税 D:漆原悠一(tento)
安穏とした日常生活の中で、“死”を真っ向から捉える機会はどれほどあるでしょうか。この2冊は、どこか遠く感じてしまう“死”に正面から向き合っています。『ぼく』は、非常にセンシティブな問題である子供の自死がテーマ。谷川俊太郎さんが淡々と紡ぐ言葉は心奥に浸透し、合田里美さんがその響きに深閑で美しい絵を添えました。探検家・角幡唯介さんの実体験を基にした『ほっきょくで うしをうつ』は、阿部海太さんが死と生が隣接する極限を描き出し、命の重みを読者に問いかけます。2冊が共に冠するシリーズの名前は「闇は光の母」。その名のとおり、“死”に想いを馳せることは、そのまま“生”を考えることにつながっている気がしてなりません。
▶︎『ぼく』
『もじモジ探偵団』
雪朱里 著 ヒグチユウコ イラスト
(グラフィック社)2,000円+税 BD:中西要介+根津小春(STUDIO PT.)
『デザインのひきだし』読者にはお馴染みの人気連載「もじモジ探偵団」5年分が1冊の本になりました。ナンバープレートやお札、ロングセラーお菓子「たべっ子どうぶつ」、電光掲示板などなど、日常の中で見かける文字が気になって仕方ない「アイアイ探偵」と「助手のネコくん」の鋭い視点とあくなき探究心で紐解かれる「文字」の奥深さに目を開かされます。ヒグチユウコさんが描く2匹(人?)のリアクションや表情にも思わずにっこり。
『わたしたちが描いたアニメーション「平家物語」』
高野文子+山田尚子 著
(河出書房新社)2,000円+税 カバー装画:小島崇史 組版+装丁:佐々木暁
FOD独占先行配信を経て、年明けから地上波放送されたTVアニメ「平家物語」。監督に「けいおん!」や「聲の形」を手がけた山田尚子さん、キャラクター原案に高野文子さんを迎えるなど、豪華製作陣でも注目を集めました。このメイキング・ブックでは監督日記、キャラクター設定、対談ほか充実の内容を通じて、古川日出男さんの全訳を底本に瑞々しく動き出した人物像、物語がどのように作り出されたのかを存分に知ることが出来ます。
『アート&デザイン表現史 1800s-2000s』
松田行正 著
(左右社)4,500円+税 BD:松田行正
19世紀から現代まで約200年の間に生まれた革新的な表現法を紹介する本書は、まさに“目”で捉えるビジュアル年代史。モリスやデュシャン、自由の女神像にビートルズ……。ジャンルを縦横無尽に横断しつつ、それぞれの時代を象徴する表現から100のテーマを抽出し、ふんだんな図版と共に解説を加えています。また、グラフィックデザイナーである著者が自ら手がけた装丁も注目。小口のしかけには、誰もが「!」となる驚きがあります
『くらべるえほん たべもの』
ちかつたけお 作・絵
(学研プラス)1,300円+税 BD:嶋健夫
イラストレーターとして第一線で活躍するチカツタケオさんが手がけたのは、よく似た見た目の食べ物が2つ並んだ“比べること”を楽しむ絵本。「なにがちがう?」「どこがちがう?」の問いかけで身近な食べ物をじっくり眺めれば、対象を観察し発見することの純粋な楽しさを感じることが出来ます。わずかな差異の緻密で繊細な描写は、チカツさんだからこそなせる技。写実的でありながら、写真にはない絵だからこその魅力に瞠目します。
『はっぴーなっつ』
荒井良二 作
(ブロンズ新社)1,400円+税 装丁:名久井直子
スヌーピーが登場するコミック『ピーナッツ』のオマージュでもある荒井さんの新作は、マンガのような楽しいコマ割りと、見開きいっぱいに描かれた鮮やかでパワフルな絵の両方が味わえる、新感覚の絵本です。輝きに満ちた春、色に溢れた秋。荒井さんによる四季の描写はいずれも、希望の光に満ち満ちています。さまざまな出来事が起こり、気持ちの置きどころが難しいいまだからこそ、絵本の中でとびきりの“はっぴー”を感じてみませんか。
『日本の絵本 100年100人100冊』
広松由希子 著
(玉川大学出版部)7,000円+税 装丁:中浜小織(annes studio)
年間200~300冊の絵本を紹介する生活を約15年続けてきた広松由希子さんがA4サイズ・フルカラーで、ご自身の書棚から選んだ100人・100冊の絵本(作家)を1冊ずつ2ページにわたって紹介する意欲作。本書から浮かび上がる約100年の日本の絵本の姿を垣間見、知識とするだけに留まらず、読者それぞれの絵本リスト作り、対話が始まる予感に「絵本」、そしてそれを取り巻く世界、時間、人への著者の並々ならぬ敬意と愛を感じざるを得ない。
本記事は『イラストレーション』No.234の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。
今回のBOOKS REVIEWも掲載されている『イラストレーション』No.234。
「竜とそばかすの姫」のキャラクターデザインに参加したほか、物語を感じさせる幻想的な作品を描き、多くの人を魅了するイラストレーター・イケガミヨリユキさん。そして、アニメーション作家としてキャリアをスタートし、アニメーションと絵と絵本の3つの軸で作品を発表する大桃洋祐さんのお2人の活動を、40Pにわたって特集します。