編集部がおすすめする、いま読みたい7冊

日々刊行されるたくさんの書籍のなかから、イラストレーション編集部がおすすめする7冊を紹介します。

寒さも一層増して来るこの時期。温かい部屋でゆっくり本と向き合うのはいかがでしょうか? エッセイ、絵本、詩集などさまざまなジャンルから、お気に入りの1冊を見つけてみて下さい。


『ざらざらをさわる』

三好愛著
(晶文社)1,600円+税 D:中北隆介

平坦な日常に存在するざらざら”とした違和感。普通なら目を留めずにとおりすぎてしまうところですが、三好さんに内蔵された鋭敏なセンサーは、それを逃さず形を与えてしまいます。空き巣に感じてしまった人間性、虫歯を認めずに過ごす日々、レンタルビデオ店での長考……。その悩みや葛藤におおいに共感し、「そこ!?」という思いもかけない視点ににやけてしまうこと幾度。「あの不思議な生き物たちの生まれ故郷が、ここにある」。翻訳家・岸本佐知子さんによる帯文のとおり、創作の原点が垣間見える、著者初のイラスト&エッセイ集。

▶︎『ざらざらをさわる』

 


『特別版 らくがき絵本 えんぴつ付セット』

五味太郎著
(ブロンズ新社)2,400円+税

直接落書きが出来る描きこみ式絵本として、世界中から人気を集める「らくがき絵本」。そのシリーズ刊行30周年を記念し、五味太郎さんオリジナルデザインの鉛筆4本が付いた特別版が発売されました。この絵本に描かれるのは、どれも絶妙に想像力をくすぐる、奔放で心踊るお題。絵と言葉による五味さんの巧みな導きには、子どもも、昔子どもだった大人たちも、熱中してしまうこと請け合いです。

▶︎『特別版 らくがき絵本 えんぴつ付セット』

 


『梨の子ペリーナ』

イタロ・カルヴィーノ再話 関口英子訳 酒井駒子絵
(BL出版)1,600円+税 D:中嶋香織

梨と一緒にかごに入れられ、王様の宮殿にやってきたペリーナ。召使いとして働くことになりますが、ありもしない噂を流され、魔女の宝を取ってくるよう命じられます。ですが、どんなに理不尽な目にあっても、彼女は穢れのない心で、さまざまなものたちの苦しみを解放していき……。この民話に魅せられたという酒井駒子さんによって描かれた、勇敢で無垢な少女の姿。その繊細で健気な佇まいに、心を揺さぶられます。

▶︎『梨の子ペリーナ』

 


『窓辺の自己紹介』

椎木彩子著
(自費出版)3,000円+税 D:浦川彰太

美術作家、イラストレーターとして活動する椎木彩子さんの詩画集は、匿名で集めた「窓辺の自己紹介」という穴埋め式の詩、それらと対話するように描いた絵を、対にして収録。発信の主体が異なる言葉と絵の出会いが、アンサンブルのように呼応し、それぞれに思いがけない魅力を与え合っています。どのページも等価に楽しめるリング製本のため、表紙に飾る絵を自分好みで選ぶのも楽しい。

▶︎『窓辺の自己紹介』

 


『あいたいな』

阿部結作
(ひだまり舎)1,300円+税 D:岡本洋平(岡本デザイン室)

どしゃ降りの雨の日。女の子は、窓の外を眺めながら、一緒に遊ぶはずだった友だちはいま何をしているだろう? と思いを巡らせます。「はやく みんなに あいたいな とってもとっても あいたいな」。その純粋で切実な願いは、コロナ禍のいま、世界中の誰しもが身にしみて感じていることかもしれません。何かを待ち遠しく思う気持ちに共感し、大切な人を思う行為の尊さや愛しさを、思い出させてくれる絵本。

▶︎『あいたいな』

 


『地球の上でめだまやき』

山崎るり子著
(小さい書房)1,800円+税 装丁:鈴木千佳子

45歳から詩作を始めた著者の山崎るり子さん。この詩集には、長年専業主婦だった彼女が、暮らしの中のかすかな光を掬い上げた28編が収められています。想像の力によって、小さな部屋の狭い台所が、大きく広い世界に軽々とジャンプする驚きと気持ちよさ。単調な日常に彩りを添える視点を、彼女の詩はそっと伝えてくれます。牧野千穂さんが装画を担当し、鈴木千佳子さんがデザインした、幻想的で美しい装丁にもぜひご注目を。

▶︎『地球の上でめだまやき』

 


『We’re バッド・アニマルズ』

猪原秀陽著
(KADOKAWA)1,200円+税 BD:森敬太(合同会社飛ぶ教室)

バッド・アニマルズは、プールサイドを早歩きしたり、ジーンズのロールアップにこっそり小石を入れたりする、いたずら大好きな“めっちゃワルい”3人組。空飛ぶチーズケーキ、おしりUFO、踊る鉛筆など、彼らの毎日に現れるものはみな突飛で、愛すべきくだらなさに満ちています。3匹の自由さと無邪気さ、そして見え隠れする優しさに、癒され、脱力し、最後には不思議と明日への活力が湧いてくる1冊。

▶︎『We’re バッド・アニマルズ』

 


本記事は『イラストレーション』No.228の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

 

今回のBOOKS REVIEWも掲載されている『イラストレーション』No.228。画家のnakabanさん、絵本作家・イラストレーターの植田真さんを大きく特集し、それぞれの多岐にわたる活動に加え、2人が共に手がけた絵本や展示なども紹介します。


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