荒井良二さんの創作の旅路をたどる 「new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった」が横須賀美術館で開催

2005年に児童文学のノーベル賞と称されるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人で初めて受賞し、絵本作家としての枠を飛び越え、幅広く活動する荒井良二さん。

旅をする時のような前向きな気分で日々新たに作品を生み出してきた荒井さんの創作活動を、絵本原画、インスタレーション、立体作品など、新作や過去作を織り交ぜながら紹介する展覧会「new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった」が、7月1日(土)から横須賀美術館で開催される。会期は9月3日(日)まで。

『あさになったのでまどをあけますよ』原画/2011年、個人蔵

思わず口ずさみたくなるようなリズミカルな文体やオノマトペ、あたたかく鮮やかな色彩、描けそうで描けない独特の線や形、そして、心にふっと灯が灯るような読後感。一言では言い表すことの出来ない魅力を持つ荒井さんの絵本や書籍、合わせて100冊以上の中から、代表的な作品の原画を紹介する。

文字のない、原画ならではの発見がきっとあるはず。青と赤の2つの気球、窓から顔を出す人、小さな家々など……絵を間近で鑑賞することの出来るこの貴重な機会に、細部までじっくりと観察したい。

《流れ星スパーク奏でよギター》/2022年、個人蔵

また、荒井さんの場所やジャンルを超えた創作活動についても紹介される。同展では、新作絵画に加えて、大分県の公園に設置されたオブジェ《マッテルモン》《たいようをすいこむモン》のマケットや、「山形ビエンナーレ2018」で発表された《山のヨーナ》の立体物を再構成。絵本作家にとどまらない、荒井さんの創作の現在地を知ることが出来る。

そして、展示の最後には、旅する新作インスタレーション《new born 旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す》を発表。

子ども1人1人が展示室内に点在する家の1つとなり、物語を内包しながら旅をしていく同作。使われる素材や細部のしつらえ、家の形態から読み取れる子どもたちの物語を想像しながら、ぜひゆっくりと会場を巡って欲しい。

※同作は、積水ハウス株式会社のゼロエミッションの一環として、同社提供の材料で作成された。

《new born 旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す》制作風景

「絵本やイラスト、音楽など、様々なジャンルの壁を超越して飛び込んだ先の、ルールも分からない“知らないところ”で、それでも自分なりの仕事をする」と語る荒井さんは、これまでどんなところを旅して、次はどこへ出かけていくのか。

ジャンルを超え集められた、輝かしい魅力を放つ作品たちをとおして、荒井さんの足跡をたどる旅に出かけてみてはいかがだろうか。

 

荒井良二

写真:志鎌康平

あらい・りょうじ/1956年山形県生まれ。『たいようオルガン』でJBBY賞を、『あさになったのでまどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を、『きょうはそらにまるいつき』で日本絵本賞大賞を受賞するほか、2005年にはアジアで初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど国内外で高い評価を得る。2012年NHK連続テレビ小説「純と愛」のオープニングイラストを担当。ライブペインティングやワークショップのほか、作詞・作曲やギターも演奏するなど音楽活動も行っている。2018年まで「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ」の芸術監督を務め、さらにその活動の幅を広げている。

 


【new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった】

会場:横須賀美術館

〒239-0813 神奈川県横須賀市鴨居4-1

TEL:046-845-1211

会期:2023年7月1日(土)~2023年9月3日(日)

休館日:7月3日(月)、8月7日(月)

会館時間:10:00〜18:00

入場料:一般1,300円、高校生、大学生、65歳以上1,100円、中学生以下無料

※横須賀美術館での会期終了後、全国数会場を巡回予定

 


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