第219回ザ・チョイス  鈴木久美さんの審査レポート

ブックデザイナーの鈴木久美さんによる審査が、2021年5月26日に行われました。応募者は約300名、応募点数はおよそ1,100点です。その審査の様子と結果をレポートします。

三浦しをんさんの『ののはな通信』(KADOKAWA)や、綿矢りささんの『意識のリボン』(集英社)など、イラストレーションを使用した装丁を多数手がけている鈴木さん。今回は前回に引き続き、緊急事態宣言下でのザ・チョイスとなりましたが、換気や消毒などの対策を徹底した上で審査が進められました。

審査開始前、鈴木さんから編集部に「残すものとそうではないものを、何と呼んだらいいんでしょうか?」と相談がありました。そしてしばらく考えた後、鈴木さんは「今回は〈好き〉と〈また今度〉と呼ぶことにします」とにっこり。その言葉のセレクトから、鈴木さんの人柄と共に、絵に向き合う誠実な気持ちが窺い知れるようでした。

1次審査ではすべての作品を見て、鈴木さんが「好き」と「また今度」に作品を分けていきます。目の前に並んだ作品を見て、思わず「わあ」という声が漏れたり、「これは何でしょう?」と疑問を口にしたり。鈴木さんの審査は、終始絵と対話をするように進んでいきます。およそ40分ほどで全作品に目を通し、半数以上の応募者が1次審査を通過しました。

休憩時間、編集部からの「今回の審査は、どんな基準で選ばれているのですか?」という質問に、鈴木さんは「その方の、今後の活躍する様子や展開が想像出来そうなものでしょうか。一緒にお仕事をしていくには、明るくても暗い雰囲気であっても“開かれた”作品を選びたくなります。」と真っ直ぐに答えてくれました。

続いて始まった2次審査では、1次審査よりさらに時間をかけて作品を見ていきます。ここで印象的だったのは、鈴木さんが作品に対し「また会えたね」と思わず声をかけていたこと。その言葉からは、1つ1つの作品への深い思い入れ、何より絵を見ることを楽しむ気持ちが伝わってきました。1時間弱かけて、候補者がさらに半分に絞られ、残り約50名が次に駒を進めます。

そして今回の審査で、鈴木さんが最も時間をかけたのが最終選考です。残った候補者の作品はどれも愛着があり、なかなか判断を下すのが難しい様子。熟慮の末に何名かの候補者を外し、まずは最終選考の対象となる30名ほどが決定します。その後は全体のバランスも考慮しながら、心に決めた作品に入選と準入選を割り振っていきました。

4時間に及ぶ審査の末に、鈴木さんが選んだ入選作はどのような作品なのでしょうか。

鈴木久美さんの詳しい審査評、そして気になる今回の入選作品は、2021年7月16日発売の『illustration』No.231に掲載致します。 審査結果は、以下のとおりです。

 

<入選>

●まさおみ、渡部飛日(千葉県)●東久世、安藤巨樹、石田和幸、楓真知子、古味光子、須貝美和、中村ころもち、六角堂DADA(東京都)

<準入選>

●おきおよぐ あじ(埼玉県)江木しおり、大川菜々子、牧角春那、宮岡瑞樹、ヤマナカハルナ(東京都)

<最終選考まで残った方々>

タムラヨウイチ(北海道)ミッキーオーソラン(栃木県)大久保つぐみ(埼玉県)水野朋子(茨城県)井上純二、澁澤久実子(千葉県)長雪恵、タカヤママキコ、中野亜由美、八多沙織、平野晶、Mayuky Kahn、ヤギエツコ、山中正大(東京都)baggy、田室綾乃、ミヤザキコウヘイ(大阪府)久保田寛子(山口県)