
2026年3月17日、東京・小金井のスタジオジブリ第1スタジオにて、宮﨑駿監督の最新作品「パノラマボックス」のメディア取材会が行われた。登壇したのはスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと宮崎吾朗監督。現在完成している23点がメディアに公開された。パノラマボックスは7月8日より愛知県にあるジブリパークの「ジブリの大倉庫」企画展示室にて、制作中の作品を加えた全31点が展示される予定だ。
箱をのぞくと世界が広がる「パノラマボックス」

パノラマボックスとは、箱をのぞきこむと奥行きのある風景が広がって見える仕かけ絵のような絵箱のこと。正面からは一枚絵に見えるが、視点をずらすと見える景色が変わる。キャラクター、中景、背景画といった複数の層に分かれた絵を重ねることで奥行きが生み出される。
今回お披露目されたパノラマボックスは、2022年6月頃に宮﨑駿監督が「君たちはどう生きるか」の作画を終えたタイミングから制作がスタート。宮﨑駿監督はこのパノラマボックスを「ジブリパークのために、吾郎のために作るんだ」と日々絵を描き続けてきたそうだ。
宮崎吾朗監督によれば、一般的に横向きの構図の中で作られることが多いが、縦構図を多用するのが宮﨑駿作品の特徴だという。「カメラを上下に動かしたい、空間の設計をやりたいという意識があると思う」と吾朗監督は語った。


©2001 Hayao MIyazaki/Studio Ghibli, NDDTM
慣れ親しんだ紙から生み出される「空間」
制作に使用する素材は基本的に紙のみ。一部の作品にみられる立体物も張り子のように紙で作り上げているそう。最初に設計図を作るのではなく、ラフなレイアウトから試行錯誤して形にしている。
吾朗監督は、「なぜ紙かというと、宮﨑駿が一番慣れ親しんだ材料だということ。誰かに作らせたものじゃなくて、自分が作るということ、自分が掴める材料を使うということが大事で。彼にとってそれが紙だということです」と説明。
制作期間は作品によってまちまちで、早いものは1か月ほどで完成したが、なかには手が進まず3年ほどかかったものもあったという。作りかけて捨てたもの、そこから新しいものに移植したというものなど、子どもの頃に工作に夢中になったときのように手を動かしながら形作られてきた。
現在制作中のパノラマボックスもあり、複数点を並行して進めている。制作は基本的に宮﨑駿監督が1人で進め、美術監督・吉田昇さんが補助に入ることもあるそうだ。
鈴木敏夫が語る宮﨑駿監督の原動力
収められた作品には、映画のシーンをそのまま再現したものと、映画のイメージから独自に発展させたものが混在している。さらに完全オリジナルの作品も含まれており、吾朗監督によると「映画の中のあるイメージを取り出した」ものや、「5歳の男の子に戻って、自分が子どもの頃に好きだったものを作っている」という感覚で生まれたものもあるという。
パノラマボックスの制作と真剣に向き合う様子を間近で見てきた鈴木プロデューサーは「絵の力が衰えていない。ここにきてさらに進化している」と語った。そしてその理由として、吾朗監督が作るジブリパークの存在を挙げた。「(宮﨑駿監督は)人が作るものにはあんまり興味ない人なんですよ。(中略)自分が面白いものを作って、それを世間に出してどうだ、と。それがあの人の原動力なんですよ」と独自の見解を述べ、会場を盛り上げた。

「子どものためのジブリが帰ってきた」──宮﨑駿監督の手ごたえ
取材会の最後、吾朗監督からこんなエピソードが語られた。その日はメディア向け取材の前に、近隣にあるジブリの保育園の子どもたちを招待して、パノラマボックスを見せる時間があったという。その様子を見た宮﨑駿監督は「子どものためのジブリが帰ってきた」と非常に喜び、さらに吾朗監督に握手を求めたそうだ。
吾朗監督によると、今回制作されたパノラマボックスの窓は「小さい子どもがちょっと背伸びすれば中を覗き込めるという高さ」に設置されている。腰を曲げるのではなくしゃがみこんで子どもと同じ目線になることで、大人が見下ろすものとは違う風景を楽しむことができる。「ぜひ31回しゃがんで見てください」と呼びかけた。
見応えたっぷりのパノラマボックス
下記に取材会で公開されたパノラマボックスを掲載するが、写真ではその魅力を伝えきることができないというのが正直なところ。さらに、今回公開されたのは作品全体のごく一部。ぜひ実際にジブリパークに足を運んで、85歳を迎えたいまも意欲的に創作を続ける宮﨑駿監督の筆跡や絵から伝わる迫力を、その目で確かめてほしい。















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