「複製芸術家 小村雪岱〜装幀と挿絵に見る二つの精華〜」が開催

大正〜昭和初期にかけて装幀、挿絵などで活躍し、100年近く受け継がれる「資生堂書体」の基礎を築くなど、幅広い仕事を遺した小村雪岱。その展覧会「複製芸術家 小村雪岱〜装幀と挿絵に見る二つの精華〜」が千代田区立日比谷図書文化館で1月22日(金)からスタートする。

雪岱は大正3年9月、憧れの文豪・泉鏡花による書き下ろし小説単行本『日本橋』で、装幀家としてデビュー。その後も多くの鏡花作品を手がけており、その画号「雪岱」も鏡花によって授けられた。

泉鏡花『日本橋』千章館、1914年
泉鏡花『龍蜂集』春陽堂、1923年

以後、装幀家としてだけでなく、後に「雪岱調」と呼ばれる独自の画風で挿絵画家としても活動。邦枝完二の新聞連載小説「おせん」をはじめとした、雑誌や新聞などの印刷複製物で活躍した。さらには舞台装置家としての一面もあり、装幀、挿絵、舞台装置と3つの分野で才能をいかんなく発揮した。

同展では、【鏡花本】【新聞連載小説の挿絵】【雑誌の挿絵】【九九九会の仲間たちの装幀本】【資生堂意匠部】【大衆小説作家の装幀本】のテーマを設け、日本画家としての出自を持ちながら、さまざまな職能で輝きを放つ雪岱の仕事に注目する。

「喧嘩鳶」『東京日日新聞』『大阪毎日新聞』、1938−39年

なかでも、挿絵の仕事については、監修者・真田幸治さんの膨大な個人コレクションから当時の雑誌や新聞を用いてふんだんに紹介する。雑誌のページ全体を使って大胆にレイアウトする様からは、まさに“複製芸術家”と言える才能を感じることだろう。印刷複製物の上で表現される、雪岱の類稀な才能と、その世界を是非体感してみてはいかがだろうか。

 

小村雪岱「挿絵のモデル─個性なき女性を描いて」『ホーム・ライフ』、1935年

 

<プロフィール>

こむらせったい/本名安並泰助(旧姓小村)。明治20(1887)年、埼玉県川越市生まれ。明治41(1908)年、東京美術学校日本画科選科卒業。大正3(1914)年、泉鏡花『日本橋』(千章館)の装幀を手がけ、以後、鏡花本のほとんどの装幀を任される。また、水上瀧太郎や久保田万太郎、里見弴、昭和に入ってからは邦枝完二や長谷川伸、子母澤寛ら、大衆小説作家らの著書の装幀を多く手がけている。挿絵画家としては邦枝完二の新聞連載小説「おせん」や「お伝地獄」で確固たる地位を築き、舞台装置家としては守田勘彌「忠直卿行状記」を嚆矢として、中村歌右衛門や尾上菊五郎の舞台の装置を多く手がけた。昭和15(1940)年歿。昭和17(1942)年、『日本橋檜物町』『小村雪岱画集』(高見澤木版社)刊行。

 


「複製芸術家 小村雪岱〜装幀と挿絵に見る二つの精華〜」

会場:千代田区立日比谷図書文化館

会期:2021年1月22日(金)〜2021年3月23日(火)

休館日:2月15日(月)、3月15日(月)

住所:〒100-0012 東京都千代田区日比谷公園1-4

開室時間:月〜木・土 10:00~19:00、金10:00〜20:00、日・祝10:00〜17:00(入場は閉室30分前まで)

入場料:一般 300円 、大学・高校生200円、千代田区民・中学生以下、障害者手帳などをお持ちの方および付添の方一名は無料 *住所が確認出来るもの、学生証、障害者手帳などをお持ち下さい。

Webサイト:https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/hibiya/


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