空想と現実を行き交う自由な発想とタッチで、作品制作のみならず絵本の刊行など幅広い活躍を見せる画家ヒグチユウコさん。
2019年から開催されている初の大規模個展「CIRCUS」が全国を巡回し、「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」として、パワーアップして今年東京に帰ってきた。六本木・森アーツセンターギャラリーで4月10日(月)まで開催されている。
本展では、全国を巡回した約500点の作品に、巡回では紹介しきれなかった作品も合わせた展示総数約1500点から、ヒグチさんの画業を余すところなく紹介している。
展覧会場に入るとまず目に飛び込むのは、黒い壁にずらりと並んだ美しい原画の数々。ここでは『ヒグチユウコ画集 CIRCUS』(2019年、グラフィック社)、『BABEL Higuchi Yuko Artworks』(2017年、グラフィック社)に収録された作品や、幅広い仕事で描いた最新の作品を展示。壁に並んだ原画の密度は展覧会の終わりまで一貫して変わることはない。
足を進めると、中心にヒグチさんが背景を担当した『カカオカー・レーシング』(2017年、グラフィック社/今井昌代著)の巨大サーキットが展示された、まさにサーカスといった賑やかな空間が広がる。
ここでは、デビュー作『ふたりのねこ』(2014年、祥伝社)をはじめ、『ギュスターヴくん』(2016年、白泉社)、『ほんやのねこ』(2018年、白泉社)などのこれまで手がけた多くの絵本の原画が勢揃い。さらに本会場のための描き下ろしの大作《終幕》と、これまで巡回した全9会場で、会場ごとに描き下ろされたメインビジュアルを一挙に見ることが出来る。
赤い壁の空間を抜けると、緑の壁紙の落ち着いた空間に。ここでまず目に入るのが、猫の風神雷神図屏風だ。猫と和が融合した独特な雰囲気の和室や屏風、個性豊かなこけしなどの作品が展示されている。和室の置き物1つひとつにもぜひ注目して欲しい。
しばらく進んだ先のスペースからは、どこか不穏さが漂い始める。ここで見ることが出来るのはヒグチさんの持ち味の1つである、かわいさと怖さが混じり合った作品たちだ。
デザイナーの大島依提亜さんとタッグを組み、近年精力的に発表している映画ポスターにも注目。ここではその新作や原画も展示している。写実的なイラストレーションと、大島さんのデザインによりさらなる魅力を纏った大きなポスターの並びは迫力満点だ。
そのほか会場内では、本展のメインビジュアル《終幕》のメイキング、日本のコマ撮りスタジオ「ドワーフ」が制作した「ギュスターヴくん」のアニメーションとそのセットなども見ることが出来る。会場を出てもまだまだ楽しめる、展覧会オリジナルグッズやカフェメニューなどもチェックしたい。
ヒグチさんの膨大な仕事量と幅広い表現に圧倒されること間違いなしの大ボリュームの展覧会。まだ見ていない人はちろん、前回訪れた人も、さらにパワーアップしたヒグチさんの世界をぜひ堪能して欲しい。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
会期:2023年2月3日(金)~2023年4月10日(月) *会期中無休
開館時間:10:00~18:00 *金・土曜は20:00まで *入館は閉館の30分前まで
入場料(日時指定券):一般・大学生・専門学校生2,000円、中高生1,600円、小学生600円
*枠に余裕がある場合、会場でも当日券を販売します。
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