編集部がおすすめする、いま読みたい7冊

日々刊行されるたくさんの書籍のなかから、イラストレーション編集部がおすすめする7冊を紹介します。

遠出の難しいいま、本をとおしてさまざまな世界を冒険してみるのはいかがでしょうか?絵本や漫画、画集などさまざまなジャンルから、お気に入りの1冊を見つけてみて下さい。


『新装版 くまの子ウーフの童話集(全3巻)』

神沢利子 作  井上洋介 絵

(ポプラ社)3,900円+税 D:守屋史世(ea

1969年の刊行以来読み継がれ、愛されている「くまの子ウーフ」シリーズが装いを新たにしました。愛らしいとしか形容しようのない黄色の函、子どもたちにも読みやすいやや小ぶりの判型や現代に即したより親しみのある書体設計など、さまざまに工夫が凝らされ、これまで以上に読書の扉を大きく開いてくれます。神沢さんが生み出したウーフの率直で無邪気な「なぜ?」には時代を経てなお深い気付きと喜びがあり、ふと漏れ出る「うーふー」という声が孕む感情の豊かさなどは井上洋介さんが描き出す姿形をもって、より一層胸を打ちます。読んだことのない方はもちろん、すでに読んだことがある方もこの機会にもう1度、遊ぶのと、食べるのと、考えるのが大好きなくまの子と出会ってみませんか?

『新装版 くまの子ウーフの童話集(全3巻)』

 


ぼくがふえをふいたら』

阿部海太 作

(岩波書店)1,700円+税

真っ赤な太陽が沈む直前ぼくが奏でた笛の音は彼方で眠るだれかを呼び起こし、起こされた彼らは夜と共にぼくの元へとやって来て、音楽を奏で始めます。タタ タタ、ビーン ビーン、ケチャ カチャ、重なり、広がり、弾ける、音! 音! 音! 阿部さんの力強く瑞々しい想像と創造の力は、物理的には無音のという媒体で五感を思いきり揺さぶり、この世界に満ちる面白さに目を開かせてくれます。

『ぼくがふえをふいたら』

 


『平野甲賀と』

平野甲賀 著

NEAT PAPER4,000円+税 装丁+本文D:古本実加 本文D:吉良幸子

日本を代表する装丁家・平野甲賀さんによる「描き文字画文集」の決定版。新作の描き文字作品をはじめ、移住先の高松市で取り組む寺子屋「マルテの学校」の活動記録、仕事場での制作風景、交流のあったイラストレーターについてのエッセイなどを収録。描き文字、文章、絵、写真が賑やかに詰まった1冊からは、82歳の装丁家のいまと、描き文字に対する深い造詣や愛情が伝わってきます。

『平野甲賀と』

 


『わかめとなみとむげんのものがたり』

リトルサンダー 著  野村麻里 訳

(リイド社)3,800円+税 D+日本語版本文 DKatol 日本語版本文D:中山望

さらに活躍の場を広げる漫画家・イラストレーターのリトルサンダー。2019年に中国語(繁体字)と英語とで発表された漫画が邦訳されました。香港民主化デモの只中6年ぶりに描かれた漫画は運命を繰り返す少女わかめなみの風変わりで苛烈な愛の物語で、彼女は登場人物を通じて時に読み手に鋭く問いかけます。仕事の相棒で友人のKatolによるデザインも作品世界の増幅装置として見事。

『わかめとなみとむげんのものがたり』

 


すっとびこぞう!おばけかいどう おつかいどうちゅう

大島妙子 作

(小学館)1,300円+税 装丁:タカハシデザイン室

足が速くて気は優しい、泣き虫が玉に瑕という主人公・とびのすけ。幸せに暮らしている様子でしたが、ある日病で寝こんでしまったおとっつぁんのため、おっかさんから薬のお使いを頼まれて……。物語の前半で明かされる衝撃の事実に度肝を抜かれる暇もなく、あれやあれやと展開する涙あり、笑いありのおばけかいどうをひた走るとびのすけの旅路にぐいぐい引きこまれ、何度も味わいたくなる1冊です。

『すっとびこぞう!おばけかいどう おつかいどうちゅう

 


『ぼくらのまちにおいでよ』

大桃洋祐 作

(小学館)1,500円+税 BD:中嶋香織

心踊る色合いと柔らかな筆致で描かれた大桃さんの絵本デビュー作は人と動物が一緒に暮らす街が舞台。花が大好きなライオンの花屋さん、踏み台いらずのゾウの本屋さん、自分の作ったものが一番だと譲らないシカの三兄弟の帽子屋さんなど、みんな生き生きとしていて楽しそう。時折俯瞰で描かれる街のシーンには作中では言及されない動物たちの暮らしも垣間見られ、ぼくらのまちへの憧れが募ります。

『ぼくらのまちにおいでよ』

 


『講談えほん  曲垣平九郎  出世の階段』

石崎洋司   五十嵐大介   神田伯山 監修

(講談社)1,500円+税 装丁+レイアウト:坂川栄治+鳴田小夜子(坂川事務所)

日本の伝統芸能「講談」が絵本になりました。気鋭の講談師・神田伯山さんが監修し、五十嵐大介さんが絵を描いたお話の舞台は、東京都港区にいまも存在する「出世の階段」。馬術の名人である曲垣平九郎の活躍を描いた物語は、声を出さずにはいられないほど、小気味よく軽快な文章で進みます。「講談えほん」シリーズは全6巻。宇野亞喜良さん、いぬんこさんらいずれも錚々たる方々が作画を担当しています。

『講談えほん 曲垣平九郎 出世の階段』

 


本記事は『イラストレーション』No.229の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

 

今回のBOOKS REVIEWも掲載されている『イラストレーション』No.229。日本初の本格的トレーディングカードゲーム「ポケモンカードゲーム」を総力特集。歴代のカードに使われたイラストレーションの紹介や関係者へのインタビュー、「ポケモンカードゲーム公認イラストレーター」による座談会など、盛りだくさんの内容です。


関連記事