それぞれにヒット作を数多く生み出す、絵本作家の鈴木のりたけさんとヨシタケシンスケさん。令和を代表する2人の人気作家によるトークイベント「こどもの本総選挙PRESENTS 鈴木のりたけ×ヨシタケシンスケ~『絵』と『本』のはなし~」が、11月8日(金)に開催された。
同イベントは、出版業界が一丸となって読書を推進するイベント「BOOK MEETS NEXT 2024」の一環として行われたもの。自著のプロモーション以外で、2人の話を聞くことができる大変貴重な機会ということもあり、会場である東京・神保町のブックハウスカフェには、多くのファンが詰めかけた。
トークイベントは「絵本をつくる時に、どんな本に影響を受けていますか?」、「魅力的な絵はどうやって描くのですか?」、「最近買った素敵な本の話を教えてください」など、事前に用意されたいくつかの質問にそれぞれ答える形式で進んでいく。“ユーモアたっぷり”で、いつも新鮮な視点を与えてくれる絵本をつくる2人には、どんな共通点や相違点があるのだろうか。
まず「お互いの本で、好きな本はありますか?」という質問に、ヨシタケさんがあげたのは、鈴木さんの絵本『ぼくのおふろ』(PHP研究所)。これから始めての絵本に取り組むタイミングだったというヨシタケさんは、この本を手に取った時のことを「心底がっかりしたんです」と振り返る。
「僕が絵本でやりたいと思っていたことが、この本で全部やられていた。だから自分にもうできることはないなと思いました。それくらい僕が好きなものが全部入っている絵本です」(ヨシタケさん)
また「魅力的な絵はどうやって描くのですか?」という質問には、鈴木さんが「絵は手段」と答える。
「以前はグラフィックデザイナーをやっていたので、写真、グラフィック、さまざまな方法がある中で絵は1つの手段だと思っているんです。だから絵本作家になったいまも、より魅力的に見せるため、多くの人に届けるための手段として、どういうタッチの絵が最適なのかを意識していて。抜けのいい絵にしたいんだったら、アクリル絵具ではなくて、パステルやカラーインクを使おうかなとか、画材についても細部まで考えています」(鈴木さん)
鈴木さん、ヨシタケさんが織りなすトークに、会場は笑いに包まれる場面が何度もあり、それぞれの語り口からはお互いへのリスペクトも垣間見えた。またトーク終了後には、さまざまな年代の観客から質問が相次ぐなど、イベントは当初の予定時間から延長し、大盛り上がりのうちに幕を閉じた。
「BOOK MEETS NEXT 2024」は11月24日(日)まで開催されており、今後も全国9都市で注目のイベントが予定されている。作り手の声をとおして、さまざまな角度から読書の魅力に触れることができる機会に、ぜひ足を運んでみてほしい。
〈プロフィール〉
すずき・のりたけ/1975年、静岡県浜松市生まれ。会社員、グラフィックデザイナーを経て、絵本作家に。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞、『しごとば 東京スカイツリー®』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞、『大ピンチずかん』(小学館)で第6回未来屋えほん大賞・第13回リブロ絵本大賞・第15回MOE絵本屋さん大賞を受賞。
よしたけ・しんすけ/1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表。絵本デビュー作『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)以降、数々の賞を受賞し、注目を集める。
「BOOK MEETS NEXT2024」
開催期間:2024 年10 月26 日(土)~11 月24 日(日)
会場:全国9 都市、神保町ほか都内各所
主催:BOOK MEETS NEXT 運営委員会
公式サイト:https://book-meets-next.com