【展覧会レポート】「柚木沙弥郎 life・LIFE」東京・立川 PLAY! MUSEUMで開幕

染色家・アーティストである柚木沙弥郎さんの70年を超える創作活動の中から、「くらし」と「人生」をテーマに作品を紹介する「柚木沙弥郎 lifeLIFE」がPLAY! MUSEUMで開幕した。会期は2022130日(土)まで。

柚木さんは型染めで布に模様を大胆に染めた染色作品をはじめ、版画や絵画、立体、絵本の制作なども数多く手がけ、その創作活動は今日も続く。そのさまざまな創作物はアートと工芸品の間のような存在であり、手にとる人の生活を彩り、寄り添うよう作られてきた。本展はそんな柚木さんの作品をゆっくりと見て、全身で感じ、誰もが楽しめる場となっている。

会場に入ってまず最初に広がっているのは、柚木さんが手がけた絵本の原画約80点が展示される「絵のみち」。子どもたちや、読み聞かせをする大人に、繰り返し手にとってもらえるものであって欲しいという思いが込められた作品が、さりげなく心に寄り添ってくれる。絵のみちを進むうち、愉快で愛らしいキャラクターや楽しげな色使いに、思わず引き込まれてしまうだろう。

『そしたら そしたら』(谷川俊太郎 文/福音館書店)原画
『つきよのおんがくかい』(山下洋輔 文/福音館書店)原画

奥の展示室へ向かう通路にあるのは「柚木さんの好きなもの」が集められたコーナー。旅先で心惹かれた民芸品や玩具を購入し、毎日眺められるよう家中に並べているという柚木さん。今回の展示では、その一部であるキャビネットの中身が、配置に至るまで忠実に再現されている。「人間はいつもワクワクしていないとね。」という柚木さんのメッセージが伝わってくるような空間だ。

ご自宅のキャビネットを再現した展示。その配置にも柚木さんの趣味嗜好が感じられる。

さらに通路を進んでいくと現れるのは、70年にわたって制作された染色作品が並ぶ「布の森」。色とりどりの大きな布作品が光を透過し、優しく発光しているような、印象的な空間だ。人や動物を描いた作品から、自然を表現した抽象的な作品まで、そのモチーフはさまざま。布の森を歩きながら、模様を自分の記憶とリンクさせたり、想像を膨らませたりと自由に作品を楽しみたい。

「理解しようと思ったりせず、ゆっくりと見て、感じて欲しいですね。」と柚木さん。すでに作品をご存知の方も、これからという方も、ぜひ会場へ訪れて、思い思いの楽しみ方で作品を味わってみては。

 

〈プロフィール〉柚木沙弥郎/染色家・アーティスト。1922年、東京都生まれ。 1942年、東京帝国大学文学部美学・美術史科に入学。1946年、岡山県の大原美術館に勤め、柳宗悦の「民藝」に出会い、芹沢銈介に師事し染色家に。 1972年に女子美術大学の教授、1987年からは学長を務めた。染色のほか、版画、人形、絵本などさまざまな作品を制作・発表。国内の公立美術館のほか、フランス国立ギメ東洋美術館でも展覧会を開催。

 


「柚木沙弥郎 life・LIFE」

会期:2021年11月20日(土)〜2022年1月30日(日) *会期中無休(12月31日、1月1日、2日を除く)

会場:PLAY! MUSEUM

住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3

時間:10:00〜18:00 *平日は17:00まで/入場は閉館の30分前まで

入場料:同時開催の「ぐりとぐら しあわせの本」展の料金も含む

一般 1,500円 /大学生1,000円/高校生800円/中・小学生500円/未就学児無料

*各種割引制度は、ギャラリーのWebサイトをご確認下さい。

Webサイト:https://play2020.jp


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