
2024年に惜しまれながらその生涯を閉じた染色家の柚木沙弥郎さんの回顧展「柚木沙弥郎 永遠のいま」が東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーにて開催されている。会期は12月21日(日)まで。
同展覧会では、一番最初に制作した型染布、亡くなる数カ月前にお気に入りの包装紙を使って手がけたコラージュ作品など、豊富な作品を展示。民藝との出会いを起点に、ジャンルの垣根を越えてくらしを明るく彩る作品を生み出してきた柚木さんの75年にわたる創作活動をたどることができる。
1 章 民藝はずっと僕の根っこにある

型染を学び、小幅の布を染める技法である注染を、広幅の布地に応用し、洋風化が進む当時の生活の中でも染めものを展開した柚木さん。展示室に入ると色鮮やかな染め布が空間を彩っている。染色の道に進むきっかけとなった染色家・芹沢銈介さんの型染カレンダーも展示されているので、ぜひチェックしてほしい。

2 章 ワクワクしなくちゃ、つまらない

2章では、1980年代に入り版画やガラス絵、立体造形など、染色以外の新たな表現手法に取り組み始めた柚木さんの作品が色とりどりに展示されている。
ここでは、谷川俊太郎さんのリズミカルな文章と表情豊かな動物たちが印象的な『そしたら そしたら』や、詩人で童話作家の岸田衿子さんが、四季折々の天気を題材にした『てんきよほう かぞえうた』といった絵本の原画などを間近で見ることができる。

3 章 旅の歓び

この章のテーマは「柚木を巡る旅」。
民藝と出会った岡山、青春時代を過ごした長野、染色修業に励んだ静岡、憧れの詩人・宮沢賢治の故郷である岩手、交友を深めた舩木家の窯元を擁する島根など、ゆかりのある土地ごとに作品や資料を展示。各地の美術館と協力しキュレーションされたという展示物からは、作家の大切にしてきたものたちが伝わってくる。

4 章 今日も明日は昨日になる

2014年にインテリアショップ・イデーにおいて自身の作品を展示したことで、生活を豊かにする空間づくりに楽しみを見出し始めたという柚木さん。2000年代以降に携わったカフェやホテルといった商業空間のための制作のほか、晩年に手がけた作品たちが展示を締めくくっている。

「毎日が新しい今日で、それを大切に積み重ねていくことでいい人生になる」という言葉を残し、「いま」にこだわり続けた柚木沙弥郎さん。その息づかいを感じられる作品たちが、展示室で力強く輝きを放っている。
「柚木沙弥郎 永遠のいま」
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
〒163-1403 東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
会期:2025年10月24日(金)~12月21 日(日)*月曜日、11月25日(火)休館
(ただし、11月3日、11月24日は開館)
開館時間:11:00~19:00 *入場は18:30 まで
入場料:一般 1,600円/大・高生 1,000円/中学生以下無料







